
旅の解像度を上げる、THE SHARE HOTELSのアート体験
THE SHARE HOTELSの特徴のひとつに、地域の個性を反映した館内アートがあります。今回はKUMU 金沢・MIROKU 奈良のキュレーション、KAIKA 東京のアートコーディネートを担当したアートプロデューサーの高山健太郎さんにアート鑑賞のヒントを聞いていきます。
館内アートを通して味わう、金沢の武家文化
──KUMU 金沢・MIROKU 奈良のアートは、どんなふうに選んだのですか?
“そのまちの文化を汲み取る”という共通のコンセプトがあります。“まちの文化”といっても抽象的なので、まずは“金沢らしさ”、“奈良らしさ”を掘り下げることから始めました。“らしさ”の感覚は選定した作品に表しているので、ぜひホテルで作品を通じて体験してほしいんですが、簡単にいうと金沢は江戸時代に武家文化が花開いた場所というのが起点になっています。
──加賀百万石と呼ばれて栄えていたんですよね。
藩主の前田家は徳川家との確執もありつつ、平和的なやり方で先端的な技術を武家文化として継承しました。それが現代の金沢の禅やお茶、工芸に受け継がれているんですね。金沢らしさを掘り下げるにあたっては、鈴木大拙館の猪谷聡学芸員との出会いが大きかった。猪谷さんは、時には私の質問に対して回答ではなく”問いかけを作ることが回答への道筋”という形で問いを生むための様々な質問をしてくれました。やりとり自体が禅的なものでしたね。
──そんな体験を通じて、KUMU 金沢にはどんなアートを選んだのでしょう?
例えば、2階共用部とジュニアスイートには橋本雅也さんの作品を展示しています。死の象徴でもある鹿の角・骨から、生の象徴である花をつくっているんですね。生と死が矛盾なく同居しているような不思議な佇まいがあり、生命のバトンという大きな現象を一輪の花から感じられますよ。
ニホンスイセン / 橋本雅也
奈良旅の視野を広げてくれるアート
──MIROKU 奈良で重視したことはなんですか?
金沢は武家文化のように汲み取る対象が言葉として立ち上がりましたが、奈良は深い壺をかき混ぜながら拾い上げていった感覚です。日本初の都ができた場所で、固有の文化が生まれつつ大陸からの文化も持ち込まれて混ざり合い、今も色濃く残っている。この背景から”相違なるものの融合”というコンセプトが生まれました。
──館内アート鑑賞のヒントを教えてほしいです。
地下1階の本堀雄二さんの『弥勒』という仏像は、使い終わった段ボールなどからできています。捨てられる紙が生まれ変わって仏像になった姿を目の当たりにすることで、輪廻転生を表しているようにもみることができますね。
作家は作品を通じて世界と会話をしています。今は私が作品を選ぶ時に感じたことを話していますが、例えば宿泊者が奈良の仏閣を目にして輪廻転生という仏教の教えに触れた後に、その体験と館内アートの鑑賞体験がつながることで、奈良の文化をより深く理解するきっかけを提示できているのかなと思います。
ホテルにある解像度の高い作品を鑑賞することで、奈良の文化に触れるきっかけを提示できているかなと思いますね。
弥勒 MIROKU / 本堀 雄二
現代アート業界の課題解決を目指す「KAIKA 東京」の取り組み
──KAIKA 東京は開架式収蔵庫から名付けられていて、収蔵展示している作品を自由に見学できます。ここではアドバイザーとして関わりました。
都心のギャラリーで、郊外に倉庫を持つギャラリーは少なくありません。彼らは「作品を見たい」とリクエストがあるたびに数時間かけて作品を取りに行くという課題を抱えています。KAIKA 東京は、元倉庫という建物の特性を活かして「見せる収蔵庫」として使うことで課題を解決しようとしています。
KAIKA 東京のART STORAGE Photo by Takumi Ota
──高山さんは、才能あるアーティストを発掘する『KAIKA TOKYO AWARD』の企画運営にも携わっていますね。
アワードによって、普段は公開場所のない大型作品を展示する機会が生まれています。新しい作品制作の場が生まれて、アーティストのキャリアアップや才能を開花する機会に繋がっているんです。さらに言えば、アートの社会的価値が見直されて、プロデューサーやコーディネーターなど舞台裏でアートを支える人たちの才能も開花してほしいと思っています。KAIKA 東京は、現代アート業界の課題解決の道筋と親和性が高いんですよ。
高山健太郎さんの金沢のお気に入り
カクレザトのコーヒーでひと休み
金沢21世紀美術館から歩いて5分のコーヒースタンド。オーナーのお二人はコーヒーやスパイスに詳しくて、いろんなことを教えてくれます。工芸好きで、新しく手に入れた器でコーヒーを淹れてくれるのもいいんです。
『金沢民景』片手に、歴史と地続きの金沢を感じる
建築家の山本周さんが企画したzineで、金沢市の風景をテーマでまとめた小冊子。市民の目線で風景を切り取っているので、いつもと違う視点でまちを楽しめますよ。ぜひ『金沢民景』片手にまち歩きを楽しんでほしいです。
香りと旨味のあるほうじ茶、『献上加賀棒茶』
丸八製茶場がつくるほうじ茶は、昭和天皇への献上品として試行錯誤のすえに生まれたお茶だそうです。一煎目は香りを、二煎目は深まる味わいを楽しみながら一息ついています。軽いのでお土産にもぴったりですよ。
高山 健太郎 / artness
アートプロデューサー
1982年大阪市生まれ。2004年公益財団法人福武財団に入社。2005年から「瀬戸内国際芸術祭」の準備に携わり、2011年まで直島、豊島、犬島の美術館の立ち上げやアートプロジェクトに携わる。2012年に全国でコミュニティデザインを手がけるstudio-Lに参画し、「水都大阪フェス2012」に携わる。2013年にディレクターとして文化事業会社ノエチカの創業に携わり、「KOGEI Art Fair Kanazawa」や「KUTANism」など石川県の地域文化である工芸のまちづくりやツーリズムなどに8年間携わり、2021年4月独立。アート事業会社の株式会社artnessを創業。アートプロジェクトのキュレーションやプロデュースを手掛けている。