KAIKA TOKYO AWARD 2020 結果

KAIKA TOKYO AWARD 2020(企画・運営:株式会社ノエチカ)は秋元雄史氏と舘鼻則孝氏が審査員を務めました。2020年1月20日~2月21日の募集期間で、全国から絵画、陶芸、彫刻など235点の作品の応募がありました。審査会で16作品を選出し、さらにその中から大賞1作品、審査員賞各1作品が選出されました。これらの16作品は館内に約2年間収蔵展示され全国から訪れた数多くの宿泊客が鑑賞いたしました。

KAIKA TOKYO AWARD 2020 大賞
新藤 杏子「drawing of one day」

<秋元 雄史 氏 コメント>
新藤杏子は一貫して人々の営みを描いてきた。水分を含んだ顔料で、筆速をいかして描いているため、一見、軽めのドローイングに見えるが、人々の社会的な背景や暮らしぶりを想像させる、しっかりした作品である。ドローイングに描かれた人々は、新藤と関わりのあった人々である。新藤が病院に入院した時に出会った。多くは患者さんであろうか。病気の種類や症状はこのドローイングからは想像できないが、病室から検査に向かうときや何気なく病室で過ごす合間に出会った人たちだ。新堂との関わりの度合いはさておき、描かれた人々の佇まいからは、病院暮らしの中での日常的な表情が伺われる。人の暮らしぶりというのは、どこにでもあり、またそれが最も守るべきものかもしれない。日常のありがたみといえばそれまでであるが、当たり前だが、そんなことを想像させる絵だ。日記風というか、スケッチ風というか、かるいタッチなのだが、人々の姿や表情がうまく捉えられていて、つい見入ってしまう。

KAIKA TOKYO AWARD 2020 大賞 - 新藤 杏子「drawing of one day」

秋元 雄史 賞
梶浦 聖子「色を聴くウサギ」

<秋元 雄史 氏 コメント>
愛くるしい、白いうさぎである。両耳がピンと立ち、手足が長い。まるで着ぐるみのように、キャラクター化している。これがそのままひとが入る着ぐるみサイズであれば、まだ想像の範囲だろう(それでも冷静になって考えると人が入った着ぐるみでも唐突に現れれば、けっこうこわい)。しかし、まあ、それでも許容し、よしとするとして、あらためて梶浦のうさぎを見る。大きい。4mである。ここまでくると異様である。表情の愛くるしさとこの大きさ対比が、この作品のポイントであろう。大きさは時に非日常感をつくりだす。梶浦は、よくキャラクター化された動物をつくる。物語から抜け出てきたような、どこかファンタジックな生き物たちである。そこらが紡ぐ物語が梶浦の作品世界である。梶浦が大切にするものだ。もともとは扱いのむずかしい金属を扱う作家であるからか、制作プロセスには神経を使っているように見える。作品から透けて見える造形感覚がしっかりしている。

秋元 雄史 賞 - 梶浦 聖子「色を聴くウサギ」

舘鼻 則孝 賞
加藤 智大「iron-oxide painting “W.S./T****68”」

<舘鼻 則孝 氏 コメント>
加藤智大氏の描く肖像画は、強調された物質感によって描かれた人物の実在感を際立たせ鑑賞者を引き込む。しかしながら、描かれた人物は作者とは全く面識のないインターネット上で散見されるマグショットと呼ばれる逮捕者の人物写真だ。「実在する見知らぬ他人を描く」という作者と対象との距離感によって、美術史の上で永年描かれ続けてきた、肖像画という様式の現代のかたちが表されたことには作者の独自性を感じる。インターネット上で誰もが見ることのできる人物写真を加工し、敢えて抽象化させることで単なる物質的な要素に置き換えたことが、作者独自のメディウムとも言える酸化鉄での表現に結びついているのかもしれない。完成された作品は、工芸的とも言える程の高いクオリティと共に、今までの絵画表現には無いような質量を伴う立体表現を成立させている。

舘鼻 則孝 賞 - 加藤 智大「iron-oxide painting “W.S./T****68”」

その他入選作品(作家名50音順)
諫山 元貴「Objects #4」
井上 瑞貴「Night drive(2)」
内田 涼「by whom」
荻原 賢樹「無題(工場で働く人)」
クニト「落ちてきた小さき部屋」
近藤 尚「Instrumental Furniture」
DAIGO「雪」
高木 基栄「硝像 -精神分析-」
都築 崇広「汚れの絵画/集積地」
中北 紘子「PETALS」
柳 早苗「ソレイユ Au fil du temps / ときを縫う」
山本 恵海「器」
吉田 一民「岩場の男」

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